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ID 95702
タイトルヨミ
チテキ ジョウホウ ショリ オウヨウ ニヨル カヘイ シキベツ ギジュツ ニ カンスル ケンキュウ
著者
竹田, 史章
資料タイプ
学位論文
抄録
本論文は, 貨幣識別という首尾一貫したテーマの下に論旨を展開するものであ
る. 一般に, 紙幣識別機は市場ニーズとして, 一秒間に10枚以上の紙幣を識別
する能力, さらに, 製品としてはハードウェアの低コスト化と装置のコンパクト
性が要求されている. したがって, 製品化においてはアルゴリズムそのものを演
算量の少ない単純なものにすることが必要である. それゆえ, 紙幣識別機開発の
分野では以前から独自な識別式が考案され, この方式による製品化が行われてき
た. この識別式は基本的に加算,減算,比較の各演算子を用いて紙幣の特徴を表
現したものである. しかしながら,識別式を構成するバラメータに関しては,金
種の違い,データ採取時の紙幣の回転,位置ずれ,起伏によるデータ変動を想定
して,設計者が決定している. このような方法ではパラメータの組合せ数が非常
に多く, 得られた組合せが最適であるか否かの保証はなされていない. そこで
設計目標に到達したか否かを大量の紙幣データを用いて実験的に検証し, 多大な
工数を要して識別機の開発が行われている. また,設計者のノウハウおよび経験
である紙幣識別に関する知識は, 個々の単発的な処理手続きであり,パラメータ
決定を行う際には一貫した処理フローを作成するのが困難である. このような専
門家の試行錯誤の分野に知的情報処理手法の一つとして,我々はまずエキスパ
ートシステム(以後ESと略記する)を導入する. ここでは,紙幣識別の分離関
数である識別式決定に対するESの構築について述べる. つぎに,ESを識別技
術に導入することにより,従来技術と比較して大幅に開発期間および識別性能の
向上が得られることを示す. しかしながら,ここでのESの効果は,紙幣の識別
式決定においてのみ有効であり,紙幣識別における分離関数方式の問題点(市場
における紙幣に対する汚れ,破れなどのノイズ,さらにはセンサ系に対する信号
ノイズなとのロバスト性の問題) を解決するに至っていない. 一方,本研究では
紙幣識別分野への知的情報処理の別のアプローチとしてニューラルネットワー
ク(以後NNと略記する)を検討する. 以後では,このNNを応用した紙幣識別
手法について考察する. ここでは,紙幣識別に適したNNの構成ならびに入力情
報の検討をフーリエ変換などを利用して行う. また,紙幣識別の分野で従来から
問題となっていた識別結果に対する信頼性に対して,新たに信頼性評価規範を導
入し,潜在的な識別性能を検討する. NNを応用した紙幣識別手法が,識別性能
と開発期間の点から,従来の分離関数方式や一部のパターンマッチング方式と比
較して非常に有効な手法であることを述べる. しかるに,これらの種々の検討結
果を基に,NNを実際の8あるいは16ビットのCPUを有する識別機に移植す
る場合,ネットワークの規模が大きな問題となる. そこで本研究では,入力画像
の一部を任意に被覆するランダムマスクを提案する. ここでは,このランダムマ
スクによるNNの規模の縮小化について述べ,本提案手法により入力画像情報を
容易に圧縮することが可能であることを示す. さらに,従来のNNを用いた手法
と比較して,提案手法が識別性能の劣化を最小限にとどめ,大幅なネットワーク
の規模の縮小化を可能とすることを定量的に示す. また,提案手法により特殊な
デバイスを用いなくても実システムが容易に構築可能であることを既存の識別機
とパーソナルコンピュータを用いて具体的に示す.
最後に,実験システムにより,日本,韓国,米国の複数国紙幣が混合した場合
の紙幣識別が可能であることを実験的に検証する.
発行日
1994-03
備考
画像データは国立国会図書館から提供(2011/9/26。JPEG2000形式を本学でpdfに変換して公開)
フルテキストファイル
言語
jpn
文科省報告番号
甲第700号
学位記番号
甲工第24号
学位授与年月日
1994-03-26
学位名
博士(工学)