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ID 95701
タイトルヨミ
コウキョウド コンクリート オ ユウコウ リヨウ シテ PC キョウ オ ケイリョウカ スル シンコウゾウ ノ テイアン
著者
則武, 邦具
資料タイプ
学位論文
抄録
コンクリート橋は、厳しい自然環境、社会環境のもとではその重さが欠点と
もなり、依然としてある種の限界が存在する。特にPC長大橋の場合、構造の
軽量化、スパンの長大化や施工の省力化は最重点の技術課題である。
本研究の目的は、この課題に十分対応できる新しい構造を提案し、これが合
理的、かつ実用的構造であることを実証することである。提案にあたり次の研
究を行った。
①従来の構造を軽量化するうえでの問題点を踏まえて、圧縮強度80~100MPa
程度の高強度コンクリートを有効利用できる新しい構造、すなわち、スラプト
ラス構造を提案し、構造的な特徴づけをする。
②想定した高強度コンクリートの構造材料としての妥当性を既往の研究なら
びに実験的研究から検証する。
③実構造物で本構造を従来の構造と比較設計し、その有効性を明らかにする。
④全体構造および部材接合部の力学的特性を実験検証する。あわせて、供試
体の製作を通してその施工性の確認をする。
⑤実構造物への適用を施工性、工期、経済性などの点から検討する。
以上の研究結果を要約すると次の通りである。
(1)材料特性
想定した高強度コンクリートの力学的特性および設計用値は、現行の技術規
準類の規定値の延長線上で考えられる範囲である。また、その製造および施工
に関しでも部材をプレキャスト化し工場製品と同様に製作することで、高品質、
高性能を保証でき、現在のコンクリート技術で十分実用が可能である。
(2) 構造特性
軸力が卓越するスラブ部材とトラス部材とを一体化した合成構造とすること
で、曲げおよびねじり剛性の効率がよい構造である。また、部材の縮小化と二
次応力の抑制によりプレストレスの効率のよい構造である。摩擦接合と直接せ
ん断接合の二重の部材接合は場所打ちコンクリートを必要とせず、簡便で信頼
性の高い接合構造である。さらに、プレキャスト部材への分割、接合、組立て
が容易で、プレキャストセグメント工法に最適な構造である。
(3) 実構造物での有効性
高強度コンクリートの有効利用とプレストレスの効率化に加えて、架設時に
余分の補強や施工が不要になることから、使用材料が低減し、従来の構造に比
べて自重が25~30%軽減する。また、適用頻度の高い支間50-100m規模のPC橋
に最適で、押出し架設工法により施工できる。
(4) 全体模型試験
本構造はトラス構造として解析でき、横方向剛性の高い構造である。また、
部材の摩擦接合部は設計荷重状態で十分な耐力を有することが検証できた。あ
わせて、供試体の製作にあたり、プレキャスト部材は容易に接合し、組み立て
ることができ、その施工性が確認できた。
(5) プレキャスト部材の接合構造の検討
摩擦接合にトラス部材間で直接せん断を伝達する構造を付加した二重の接合
構造は、終局荷重状態で静的荷重に対して十分な耐力を有し、信頼性の高い構
造であることが検証できた。また、せん断耐力式の算定により合理的な設計法
を提案できた。また、供試体の製作を通して実構造物への適用が確認できた。
(6) 実構造物への適用
プレキャス卜部材の縮小化と軽量化に加え、部材の分割や組立てが容易で、
しかも、その形状が単純で標準化し易く、施工性が向上する。また、支間50~
100m範囲の橋梁でも押出し架設工法が適用でき、従来の構造に比べて施工性、
工期、工費などの点で優位性が高い。
以上の研究結果を総合的に判断すると、新しく提案したスラブトラス構造は、
PC橋の軽量化、スパンの長大化や施工の省力化に対して十分対応できる合理
的、かつ実用的構造であると結論できる。
なお、橋梁上下部工全体としての本構造の有効性、斜張橋、吊床版橋など構
造形式への応用展開、部材接合部の疲労問題やより一層簡便な接合構造の開発、
複合構造への展開などが今後に残された研究課題である。
発行日
1994-03
備考
画像データは国立国会図書館から提供(2011/9/26。JPEG2000形式を本学でpdfに変換して公開)
フルテキストファイル
言語
jpn
文科省報告番号
甲第693号
学位記番号
甲工第17号
学位授与年月日
1994-03-26
学位名
博士(工学)