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ID 115961
著者
川瀨, 公美子 徳島大学大学院先端技術科学教育部(知的力学システム工学専攻)
キーワード
スクールカウンセラー
災害支援
支援体制
インシデントコマンドシステム(ICS)
資料タイプ
学位論文
抄録
阪神・淡路大震災以降,災害後の心理的ケアの重要性が認識され,児童・生徒の心理的ケアのためには,スクールカウンセラー(SC)が派遣されるようになっている.SCとは,児童生徒の心理的問題に対応する専門家として,1995年いじめ不登校対応の文部省の研究事業として全国154校から始まった.現在はその規模も対応する問題も幅広くなり,従来のいじめ,不登校の他,発達,虐待,貧困,災害後のケア等に及ぶ.災害時の派遣として全国からSCが派遣された例として2011年東日本大震災,熊本地震などがある.
さて,災害時の派遣SCの活動は,支援の枠組みも支援方法も多岐にわたる.個々の事例に対応しているが,支援体制としても十分整っているとはいいがたい.
本論文では,災害支援の中でもSC に注目し,災害時における SC 派遣に関する支援体制の構築について提案することを目的とした.各章で得られた結果を順に述べる.
第1章は序論として,研究の背景をまとめた.
第2章では,資料分析やインタビューの分析から,支援時に起きる課題として,支援内容が曖昧で具体性に欠けることを明らかにした.
第3章では臨床心理士に対する意識調査から,平時と異なる被災地支援業務の事前準備について明らかにした.支援者は自らのコンディションを整えておくなど事前に理解すべき心得があり,事前研修は有効な支援活動の一助となると考えられる.
第4章では,受援体験を持つ学校関係者へインタビューから,受援者から見た支援者側の課題を明らかにした.特に,支援者のセルフケアの必要が明らかになった.
第5章では,全国の臨床心理士会への調査をから支援側組織のマンパワー不足などの問題点を明らかにした.人員充足などの組織的取り組みとともに,支援時の負担軽減のためにも事前研修や人材育成など平時からの準備が重要と明らかになった.
第6章では,標準化されているマネジメント体系であるインシデントコマンドシステム(ICS)の観点から,事例として熊本地震の支援を分析し,外部からの支援を受け入れる留意点を明らかにした.ICSの概念を活用の提案とともに,支援体制づくりにおいて支援期間中の 支援者のメンタルヘルスケアも課題として指摘した.
第7章は,これらの結果を通して明らかになったポイントから,支援体制構築の提案を示し,本論文の結論とした.第1の提案は「ICS概念を活用した体制構築」であり,特に役割の明確化と現場指揮者の指示徹底である.第2の提案は「事前研修の重要性」であり,平時の研修や人材育成とともに支援者のメンタルヘルスケアに関する内容が必要である.そして,第3の提案は「支援側組織としての充足」で,人員充足と役割分担の必要だが,支援側もICSの概念を活用し,支援体制の統制を保つことである.
本論文の結論は,今後の有効な支援のための体制構築の一助になると考える.
発行日
2021-03-01
備考
内容要旨・審査要旨・論文本文の公開
フルテキストファイル
言語
jpn
著者版フラグ
博士論文全文を含む
文科省報告番号
甲第3481号
学位記番号
甲先第388号
学位授与年月日
2021-03-01
学位名
博士(工学)
学位授与機関
徳島大学