Total for the last 12 months
number of access : ?
number of downloads : ?
ID 96799
Title Transcription
シジョウ ランソウ Oscillatoria agardhii ノ セイリ カッセイ ペプチド ニ カンスル ケンキュウ
Author
佐野, 友春
Content Type
Thesis or Dissertation
Description
藍藻類は光合成を行う原核生物で、淡水湖沼、汽水域、海洋、土壌など様々な環境下
で生育しており、生育環境によってユニークな化学構造や生理活性を示す物質を生産す
ることが知られている。特に、海洋生物に共生する藍藻から有用な化合物が単離されて
いる。藍藻は培養も比較的容易なため、医薬品リード化合物の新たな天然物資源として
注目されている。
淡水産藍藻の有毒物質については精力的な研究が行われ、肝臓毒や神経毒が構造決定
されている。しかし、淡水産藍藻の毒物以外の生理活性物質についてはあまり研究が行
われておらず、特に、有毒種が多い糸状藍藻Oscillatoria属についてはほとんど化学成分
研究が行われていない。
そこで、本研究では、Oscillatoria属の中でも自然界で優占種となることが多い
Oscillatoria agardhiiに注目し、その生理活性物質の検索を行うことを計画した。その結果、
糸状藍藻Oscillatoria agardhijは化学構造的に非常に興味深い生理活性ペプチドを生産し
ていることを見出した。これらの生理活性ペプチドについて詳細に研究を行い、以下の
ような知見を得た。
1) O. agardhiiが生産する肝臓毒microcystinを単離し、その構造を解析した結果、MS
とアミノ酸分析では既存の3-desmethylmicrocystinと区別がつかないDhb-microcystin-
RR,HtyR,およびLRの構造をNMRを用いて明らかにした。このDhb-microcystinの
構造を決定する際に、HMBC法よりも微弱な結合を測定可能なdecoupled-HMBC法
が有効であった。Dhb-microcystinの細胞毒性はmicrocystin-LRよりやや強い値を示
した。
2) トリプトファンの分子内環化反応とイソプレンユニットの付加反応によって生合成
されたと考えられる新規異常アミノ酸(3a-cis)-1,2,3,3a,8,8a-hexahydro-3a-(3-methyl-2-
butenyl)-pyrrolo[2,3-b]indol-2-carboxylic acid (oscillatoric acid)ユニットを含む環状ペプ
チドOscillatorinを単離し、その構造を決定した。Oscillatorinはキモトリプシンを強
力に阻害し、そのIC50は8x10-7 Mであった。
3) 3-Amino-6-hydroxy-2-piperidone (Ahp)残基を含む新規環状ペプチドOscillapeptinA~C、
およびGの構造を決定した。OscillapeptinBはトリプシンの活性を強力に阻害し、
そのIC50は7x10-9Mであった。OscillapeptinA、C、およびGはキモトリプシンを
強力に阻害し、そのIC50はそれぞれ3x10-9 M, 7x10-8 M,4x10-9 Mであった。ま
た、その構造と阻害酵素特異性に関して新たな知見を得た。
4)ウレイド結合を有し、homotyrosineおよびN-Meアミノ酸を含む環状ペプチドOscillamide
A~C,H,およびYを単離した。OscillamideBおよびYはキモトリプシンを
阻害した。
5)淡水産の藍藻から塩素で置換された3-amino-10-chloro-2-hydroxydecanoic acid (CIAhda)
を含む新規鎖状ペプチドOscillagininA およびその脱塩素体OscillagininBを単離し、
その構造を決定した。OscillagininAおよびBはキモトリプシンを阻害した。
本研究でOscillatoria agardhiiから得られたペプチドは、環状となったものが多く、さ
らに、Ahpやoscillatoric acidなどの環状アミノ酸やβ-アミノ酸などの異常アミノ酸を多
く含んでいた。これら環状ペプチドは、デプシペプチドとなったものやウレイド結合を
含むものもあり、構造的に興味深い。さらに、これら環状ペプチドはアミノ酸組成も多
様性に富み、医薬品のリード化合物となることが期待される。
本研究で用いたOscillatona agardhiiは環状ペプチドの宝庫ともいえるもので、Dhbmicrocystin
以外は同じ構造の化合物が見つからないほど、株によって生産しているペプ
チドの構造がそれぞれ異なり、医薬品リード化合物の資源としても有用であることが確
認された。
Published Date
1996
Remark
画像データは国立国会図書館から提供(2011/9/26。JPEG2000形式を本学でpdfに変換して公開)
FullText File
language
jpn
MEXT report number
乙第1541号
Diploma Number
乙薬第24号
Granted Date
1997-03-14
Degree Name
Doctor of Clinical Pharmaceutical Science