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Title Transcription
ベスナリノン ニヨル ヒト ダエキセンガン サイボウ ノ ゾウショク ヨクセイ キコウ ノ カイセキ
Author
Nakashiro, Koh-ichi Second Department of Oral and Maxillofacial Surgery, Tokushima University School of Dentistry
Content Type
Thesis or Dissertation
Description
唾液腺癌は化学療法、放射線療法に抵抗性で局所再発、遠隔転移の多い予後不良の悪性腫瘍である。ベスナリノン
は強心剤として開発されたが、その副作用である無顆粒球症発症の原因究明の過程で多くの悪性腫瘍細胞に対して分
化・アポトーシス誘導活性を有すること明らかにされ、唾液腺癌を含む多くの悪性腫瘍に対して分化誘導療法が試
みられている。本研究ではベスナリノン処理によりG1 arrestが誘導されるヒト唾液腺癌細胞(TYS)を用いてベスナ
リノンによる細胞増殖抑制作用の分子機構の解明を試みた。
解析は(1)ベスナリノン処理TYS細胞より調製したmRNAを用いanti-sense oriented expression cDNA library
を構築し、そのlibraryをTYS細胞にトランスフェクション後、ベスナリノン耐性株を選択し、挿入されている
cDNA断片を回収するanti-sense expression cloning 法と、(2)上記libraryをランダムにシークェンスし分化、増殖
に関与すると考えられる遺伝子のペスナリノンによる発現誘導を検索し、up-regulationがあれば、その分子を中心に
そのシグナルを上流、下流へと追っていくcandidate gene searching 法にて行った。
その結果、anti-sense expression cloning 法にてribosomal protein L21 cDNAを得た。ribosomal protein L21
anti-sense cDNAを強制発現させた細胞はベスナリノンに対する感受性が低下していたが、その作用はおそらくある
種のタンパク合成の阻害によるものであり、ribosomal protein L21タンパクの特異的な発現抑制がベスナリノン抵抗
性の原因とは考え難かった。一方、candidate gene searching 法でマウスあるいはラットの細胞においてtransforming
growth factor-β1 (TGF-β1)あるいはfollicle-stimulating hormone (FSH)により誘導される遺伝子として報告されて
いるTGF-β1-stimulated clone 22 (TSC-22) cDNA断片を得た。TSC-22遺伝子はTYS細胞においてベスナリノン
処理にて明らかな発現誘導が認められたため、ヒトTSC-22cDNAの全長のクローニング、構造解析、機背繍析を試
みた。5'-RACE変法でopen reading frameを含むほほ完全長1.6kbのヒトTSC-22cDNAを得た。全塩基配列を決
定したところ予想されるアミノ酸配列はマウス、ラットに98.6%の相同性が認められた。またロイシンジッパー構
造が認められたが、その近傍にDNA結合領域あるいは核移行シグナルが存在しないことより、bZIP転写因子と結
合しその転写活性を抑制するdominant negative 転写制卸因子である可能性が示唆された。TSC-22遺伝子はTYS
細胞において細胞密度に依存しその発現が増加し、ベスナリノンはその発現を更に増強した。タンパク合成阻害剤シ
クロヘキシミドを用いた実験によりベスナリノンによるTSC-22遺伝子の発現増強は間接作用であることが示唆され
た。次にTSC-22の上流、下流のシグナルを解析する目的でTGF-β1、p21WAF1の発現を検索した。ベスナリノン
はTYS細胞においてTGF-β1をわずかに誘導し、p21WAF1を著明に誘導した。またp21WAF1の誘導は直接作用
であることが明らかとなった。更にTGF-β1はp21WAF1、TSC-22の発現を誘導した。次にTSC-22アンチセン
スオリゴヌクレオチドのTYS細胞に対する影響を検索すると、対数増殖期には全く影響を与えないが、細胞密度が
上がり増殖を止めるべき時期になると細胞増殖促進作用が認められた。またTSC-22アンチセンスオリゴヌクレオチ
ドはベスナリノンによるTYS細胞の増殖抑制作用を阻害した。
以上の結果より、ベスナリノンはTYS細胞においてTGF-β1あるいは他のタンパク質を介したTSC-22遺伝子の
誘導、更に直接作用あるいはTGF-β1を介したp21WAF1の誘導により細胞周期をG1期に止め、細胞増殖抑制作
用を示すことが示唆された。
Remark
画像データは国立国会図書館から提供(2012/3。JPEG2000形式を本学でpdfに変換して公開)・p.81-97には下記参考論文2本が掲載されているが、著作権保護のため画像データからは割愛している。主論文①Mitsunobu Sato, Koji Harada, Takashi Bando, Tetsuya Shirakami, Koichi Nakashiro, Hideo Yoshida, Satoru Nakai, Kazuyoshi Kawai, Masakazu Adachi. Characteristics of antitumor activity of 3,4-dihydro-6-[4-(3,4-dimethoxybenzoy1)-1-piperaziny1]-2(1H)-quinolinone (Vesnarinone) against a human adenoid squamous carcinomaforming cell line grown in athymic nude mice.cancer letters 91(1995),1-9②Hitoshi KAWATA, Koh-ichi NAKASHIRO, Daisuke UCHIDA, Koji HARADA, Hideo YOSHIDA, Mitsunobu SATO.POSSIBLE CONTRIBUTION OF ACTIVE MMP2 TO LYMPH-NODE METASTASIS AND SECRETED CATHEPSIN L TO BONE INVASION OF NEWLY ESTABLISHED HUMAN ORAL-SQUTMOUS-CANCER CELL LINES. Int.J.Cancer 68,1-8,1996
FullText File
language
jpn
MEXT report number
甲第849号
Diploma Number
甲歯第110号
Granted Date
1997-03-26
Degree Name
Doctor of Dental Science