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ID 96893
Title Transcription
カデンセイ ヤクブツ ト セイタイマク オヨビ DNA トノ ソウゴ サヨウ : ブツリ カガクテキ シュホウ オ モチイタ モデルテキ ケンキュウ
Author
吉川, 祐子
Content Type
Thesis or Dissertation
Description
薬物が生体系に作用して機能を発現させる場合、その作用形
態として、特定の受容体を介した基質特異的な作用と、静電的
相互作用や疎水性相互作用に基づく非特異的(non-site-specific)
な作用が考えられるが、多くの場合、前者の受容体を想定した
相互作用に焦点が置かれている。しかし、麻酔剤やミトコンド
リアの脱共役剤、または生体ポリアミンのように生体膜やDNA
に非特異的に作用して特異的な薬理活性をもたらす薬物も存在
する。この様に、特定の受容体をもたない薬物、特に荷電性薬
物で、一見静電的相互作用のみに立脚した作用を示すような化
学種がなぜ特異的な薬理作用を示すのかまだ未解決な点も多い。
本論文ではこの様な荷電性薬物に注目して、生体高分子系(生
体膜とDNA) への作用をモデル系を用いて調べた。
生体膜は主としてリン脂質二重層から成り、非特異的な薬物
の膜透過は、膜脂質に由来する疎水部分に薬物がどの程度溶解
し易いか、つまり薬物の疎水的な性質に依存している。しかし、
生体に作用する多くの薬物が解離基を有し、しかも生理的条件
下で解離型(イオン)で存在するにもかかわらず、膜への移行
性は主としてその非解離型(中性型) の疎水性(水油二相間に
おける分配係数)から間接的に評価され、解離型の分配機構に
ついては不明な点が多い。本研究では、イオンの疎水領域への
移行は、主として対イオンと複合体を形成して達成されると考
え、水ーオクタノール二相分配系を生体モデル膜として用いて、
Methyl Orange (MO)を指標として種々のカチオンとの“イオン
対分配機構”を詳細に検討した。最初にアルカリ金属イオン
(Na+,K+,Cs+)を用いてイオンの大きさの疎水性相互作用に与
える影響を調べたところ、MOとのイオン対形成時に生じる脱水
和の程度はCs+が最も大きく、かつオクタノール相へも移行し
やすいことが明らかとなった。次に一価のアミノ化合物である
アミノアルカノールとアルキルアミンを用いてアルキル鎖や親
水基を導入したときの膜への移行性を比較したところ、アルキ
ル鎖の長い程オクタノール相へ移行しやすく、さらにメチレン
基1個当りの疎水領域移行に対する寄与はOH基を有するアミノ
アルカノールの方が少ないことも明らかになった。さらにイオ
ン対の疎水領域移行に伴い、対イオン間の静電引力が増大し分
子の運動の自由度が減少することも示した。
一方、遺伝情報を伝える本体であるDNAへの薬物の作用は、
これまで主として一次塩基配列やその情報に基づいて産生され
るタンパク質の変化に主眼が置かれ、DNAの高次構造への影響
についてはあまり重点が置かれてこなかった。しかし、DNAは
生体中でコンパクトに折り畳まれた状態で存在し、その凝縮構
造が遺伝子の発現を考える上でも重要であると考えられる。本
研究ではDNAの高次構造制御に焦点を当て、荷電性薬物とDNA
との非特異的な相互作用がDNAの高次構造へどのような変化を
もたらすのかを、DNA単分子の蛍光顕微鏡による動的な直接観
察と電子顕微鏡による微細構造観察から検討した。最初に二価
のジアミノアルカンのアルキル鎖長の違いとDNA単分子凝縮能
との関連を調べた。これまで低分子カチオンのDNA凝縮剤とし
ては三価以上のものしか凝縮を引き起こさないと考えられてき
たが、今回初めて二価のカチオンでもDNAの単分子凝縮を引き
起こすことがことが明らかとなり、しかも炭素数がC3とC5のジ
アミンはC2,C4,C6のものよりDNAに対する凝縮能が高いこと
も明らかとなった。次に抗癌剤でありかつDNAのインターカレ
ーターでもあるダウノマイシンのDNA凝縮高次構造への影響を
調べ、ダウノマイシンが凝縮したDNA分子を引き延ばす作用が
あることを明らかにした。従来の報告では、既に凝縮したDNA
に対してはダウノマイシンのようなインターカレーターは、そ
の高次構造に影響を与えないとされていたが、今回蛍光顕微鏡
及び電子顕微鏡による経時的観察から、凝縮DNA分子が引き延
ばされている様子が認められた。本方法は、他のDNAに作用す
る薬物のDNA高次構造への影響を調べる手段としても有用であ
ると考える。
Published Date
1996
Remark
画像データは国立国会図書館から提供(2012/3。JPEG2000形式を本学でpdfに変換して公開)
FullText File
language
jpn
MEXT report number
乙第1524号
Diploma Number
乙薬第22号
Granted Date
1996-11-15
Degree Name
Doctor of Clinical Pharmaceutical Science