ID | 96857 |
タイトルヨミ | マイクロ ビリュウシ キョウシンキ ニヨル レーザー ハッシン ゲンショウ ニ カンスル ケンキュウ
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著者 |
高橋, 敏正
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資料タイプ |
学位論文
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抄録 | マイクロメートルサイズの球形微粒子の中で色素が発光すると自由空間の場合とは異なり,ある条件を
満足する波長の光だけが微粒子内に閉じ込められて共振しレーザー発振する.このような共振は形態依存 共振(MDR)と呼ばれている.微粒子共振器は原理的に極めて高いQ値を持つが,共振器自身の長さがマ イクロメートルオーダーであるため,時間的応答が速く,ピコ秒オーダーのパルス光を発生させることも 可能になるという特長を有する.これまでに微粒子共振器を用いた低しきい値レーザー,微小光プロープブ などに関する研究が報告されている.本研究は, (1) 微粒子共振器を用いた非線形光学現象の増強, (2) 共振現象の微粒子形状依存性, (3) 微粒子共振器内のエネルギー移動の各現象に着目し,微粒子 共振器における光と物質との相互作用について明らかにすることを目的とした. (1) に関しては比較的大きな非線形光学(NLO)応答を示す高分子材料を用いて共振器となる微粒子 を作製し,共振器の光閉じ込め効果が3次のNLO応答にあたえる影響について検討を行った. NLO応答 を示す高分子材料であるポリシラン誘導体(ポリシクロヘキシルメチルシラン,PCMS)を微粒子化し, それを微粒子共振器とするレーザー発振を観測したところ,ポンプ光パワーの増大に伴いレーザー発振ピー クの波長シフトが観測された.本波長シフトについて3次のNLO現象に基づく光カー効果を用いて検討 したところ,微粒子内部の界団近傍における実効的なパワー密度が,ポンプパルス光よりも30倍以上増強 されることが明らかとなった.これは,微粒子のMDRによりバルク材料に比べ効率良くNLO効果を誘 起できることを示している. (2)に関しては,これまでに全く検討されていない回転楕円体微粒子中のMDR現象を明らかにする ため,化学的手法を駆使して回転楕円体微粒子を作製し,その光共振現象について倹討した.その結果, 球形微粒子とは異なり,回転楕円体微粒子の持つ空間的な異方性により発振スペクトルが測定部位ごとに 異なることを見いだした.これは,空間情報と波長情報を相互に変換できることを意味しており,従来に ない新しい光メモリーなどの光デバイスとして利用できることを示唆している.またフォトントンネリン グによるレーザー発振の抑制も観測され,近接場顕微鏡のプローブとしても応用できることが明らかとなっ た. (3)に関しては,球形高分子微粒子共振器中に,エネルギー供与体となる色素とエネルギー受容体と なるそれぞれの色素をドープし,レーザー発振状態における色素間のエネルギー移動過程について検討し た.その結果,エネルギー移動効率は,粒径を大きくすることにより増大することが明らかとなった.こ の結果は,従来,バルク溶液中などで、エネルギー移動効率を制御するパラメーターであった温度や色素濃 度と同様,微粒子共振器においては粒径という新しいパラメーターによってエネルギー移動を自由に制御 できることを示している.さらに,時間分解発光スペクトルの観測から極めて高速なエネルギー移動過程 が存在することも明らかになった. これら微粒子共振器内における光と物質との相互作用に関する詳細な研究は,今後MDR現象を利用し た光論理演算子,光プローブ,マイクロレーザー光源など様々なマイクロ光デバイスの開発のための極め て重要な基礎的知見を与えるものと考えられる. |
発行日 | 1999-03
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備考 | 画像データは国立国会図書館から提供(2011/9/26。JPEG2000形式を本学でpdfに変換して公開)
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フルテキストファイル | |
言語 |
jpn
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文科省報告番号 | 甲第1017号
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学位記番号 | 甲工第135号
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学位授与年月日 | 1999-03-26
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学位名 |
博士(工学)
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