直近一年間の累計
アクセス数 : ?
ダウンロード数 : ?
ID 96869
タイトルヨミ
サンギョウ ハイキブツ オ モチイタ ケイサン カルシウム スイワブツ ノ ゴウセイ ト ソノ リヨウ ニ カンスル ケンキュウ
著者
平島, 康
資料タイプ
学位論文
抄録
本論文は,リサイクルの対象として,ケイ石廃泥,石炭灰(フライアッシュ)を取り扱い,それ
らがより有効に再利用されるための処理条件,また反応生成物の性質などについて述べている.
ケイ石廃泥は,砕石を水洗して出荷される際に発生する汚濁水を凝集沈殿し,フィルタープレス
で、脱水後,排出されているものである.化学組成はシリカ質に富み,粒径も産業廃棄物としては比
般的揃っている.また,砕石粉であることから,表面が活性であり,化学的反応性が期待される.
これらの点を考慮し,消石灰と混合・水熱処理によりケイ酸カルシウム硬化体を作製し,軽量か
つ構造材としての用途開発の可能性について検討した.その結果,消石灰とケイ石廃泥の配合比,
CaO/SiO2=0.40 の試料が種々の水熱処理条件などによらず,他の配合比の試料より大きな曲げ強さ
を示すことが分かった.この時,硬化体を構成する鉱物は,低結晶のトバモライト族であった.
しかし,通常の水熱処理温度180℃で,最大曲げ強さ(約30MPa)を示すのに48時間以上要した.
そのため,反応促進を目的として各種アルカリ添加の効果を検討したところ,少量の添加で反応時
間が短縮されると共に,曲げ強さも増加した.これは,アルカリの添加がシリカ質の溶出を促進し
すみやかにケイ酸カルシウム水和物が生成されたためと考えられる.
また,コロイダルシリカを添加した実験では,コロイダルシリカが消石灰と優先的に反応し,比
較的空隙の多い反応層を形成した.この組織では,石英の物質移動が容易に行われるため,ケイ石
廃泥の反応率も上昇した.硬化体の軽量化を考慮した配合の場合,かさ密度は1.17と,従来の試料
1.75の約2/3程度となったが,曲げ強さは13MPaと低下した. しかし,市販の発泡コンクリート
と比較すると,曲げ強さは数十倍あり,断熱効果を有する構造材としての使用が考えられる.
一方,石炭灰(フライアッシュ)は,燃焼炉から発生する代表的な産業廃棄物であるが,石炭灰
のなかでシリカ成分比が高く強熱減量値の低いものは,とくにフライアッシュと称されている.
小型燃焼炉などから発生する,低品位石炭灰は未燃焼カーボンを含み,また,表面が硬石膏,炭
酸カルシウムなどに覆われているため,反応性が乏しい.そのため, リサイクルの対象とならず,
大半が海面埋立,陸上埋立されている.
本研究では, HC1溶液,NaOH溶液で、反応阻害層を取り除き,従来の水熱処理法によりケイ
酸カルシウム硬化体の作製を試みた.その結果,かさ密度1.32,曲げ強さ12.OMPaと実用強度を
有する硬化体が作製できることが分かった.さらに,この試料にケイ石廃泥をシリカ分の1/4程度
添加した場合では,曲げ強さが18~19M P aに改善された.
フライアッシュは,発生量が厖大であることから.大規模使用を考慮し,排水溝などで利用可能
な水質浄化能力を有する構造材への開発を検討した.すなわち,ケイ酸カルシウム硬化体の多孔質
組織,組成が微生物保持担体として有効であることを期待したものである.この実験では,比表面
積が大きく,また曲げ強さも大きい試料を選定し,人工排水を用いて水質浄化試験を行った.微生
物保持担体としてのケイ酸カルシウム硬化体の性能は,活性炭と同程度であり,構造材かつ微生物
保持担体として利用可能な材料であることが明らかになった.
発行日
1997
備考
画像データは国立国会図書館から提供(2011/9/26。JPEG2000形式を本学でpdfに変換して公開)
フルテキストファイル
言語
jpn
文科省報告番号
乙第1579号
学位記番号
乙工第39号
学位授与年月日
1997-11-14
学位名
博士(工学)