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ID 96879
タイトルヨミ
リンショウジョウ ジュウトクナ フクサヨウ ガ アル イヤクヒン ノ トウヨリョウ ノ テキセイカ オ モクテキ トシタ ファーマコキネティックス ノ オウヨウ
著者
森川, 則文
資料タイプ
学位論文
抄録
薬物療法では,患者個々の病状に適応した最適の治療を行うことが理
想的であり,薬学の実戦の場である病院においても, pharmacokinetics
(薬物速度論)およびclinical pharmacokinetics(臨床薬物速度論) の
考え方が定着してきた. しかし, 臨床からの強い要望と高い期待に反し
て,実際の患者に対する実践は遅れている.そこで, clinical pharmacokinetics
の臨床における実践と発展を目標に,特に高い危険性がある
にもかかわらず,臨床上必要なために行われている幾つかの治療法に対
し, 患者およびボランティアを用い,薬物の体内動態と投与設計の適正
化への検討を行い,以下のような知見が得られた.
1) 体内動態解析プログラム(OMULTI-D)の開発
臨床の復維な薬物療法に対応可能で,計算精度が高く再現性のある薬
動力学的パラメータ値を,短時間に算出することができる非線型最小二
乗法プログラム(OMULTI-D)を構築した.
2)テオフィリン徐放製剤の体内動態
気管支喘息の治療剤であるテオフィリンを用い,経口の徐放製剤の空
腹時と食後の体内動態の違いを,徐放製剤からの放出過程を考慮に入れ
たモデルにて検討し,徐放製剤からの薬物の放出過程が血中濃度推移に
大きな影響を与えることと,薬物の放出過程を考慮に入れたモデルで解
析する必要性を示した. さらに,消化管内での錠剤からの薬物の放出動
態,消化管内での存在動態をシミュレーションし,従来測定不可能な消
化管内での薬物動態を把握することが可能になった. また,テオフィリ
ン徐放製剤を食後服用した場合,空腹時より最高血中濃度が上昇する原
因は,食事により消化管からの吸収にラグタイムが生じ,その間に蓄積
されたテオフィリンが,その後,薬物の吸収の開始とともに急速に体内
に吸収されるために起きることを明らかとした.
3)メソトレキセート大量療法時のメソトレキセー卜の体内動態
抗悪性腫瘍剤のメソトレキセートの体内動態を,血中濃度推移と尿中
排泄推移から比較検討した. メソトレキセー卜の血中濃度と尿中排泄動態
には高い相関性があることが明らかとなり,血中濃度と尿中排泄速度
の同時解析を行うことで,精度の高い薬動力学的パラメータが得られる
ことを明らかとした. さらに,主代謝物であり,腎毒性の原因の一つと
言われている7-ヒドロキシ-メソトレキセートを患者の尿から単離し,
親化合物と代謝物の体内動態の迷いを検討し代謝物の方が親化合物よ
りも組織移行性が高いことを明らかとした. また,親化合物と代謝物の
血中濃度比から代謝物の生成状況が把握でき,この血中濃度比がメソト
レキセー卜大量療法時の投与設計の指標になることを明らかとした.
4)バルビタール大量療法時のサイアミラールの体内動態
バルビタール系麻酔剤のうち,超短時間型のサイアミラールの投与方
法と投与量による体内動態の違いを検討した. バルビタール大量療法時
のサイアミラールの体内動態は,長時間型の薬剤として考える必要があ
ることを明らかとし,その薬動力学的パラメータを得た. また, 蓄積相
を考慮したモデルを構築し,投与終了後に生じる血中濃度の再上昇現象
を考察した結果,サイアミラールの蓄積相からの再放出の可能性を示し
た. さらに,血中サイアミラール濃度と脳波上での静止期間との間に相
関性のないことが確認された. この結果,血中濃度モニタリングによる
バルビタール療法時のサイアミラールの投与設計の可能性を示した.
特に副作用の発現が示唆される治療を行う際に, 薬物の体内動態とそ
の効果的利用法について検討することは,より良い薬物療法を行う上で
大いに貢献し,患者の利益に結びつくと考えられる. そして,本研究の
結果は,様々な医薬品の有効利用の可能性を通じて医療の進歩に貢献す
ると考えられる.
発行日
1992
備考
画像データは国立国会図書館から提供(2012/3。JPEG2000形式を本学でpdfに変換して公開)
フルテキストファイル
言語
jpn
文科省報告番号
乙第1270号
学位記番号
乙薬第8号
学位授与年月日
1993-02-11
学位名
博士(薬学)