ID | 97120 |
著者 |
岡﨑, 貴世
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資料タイプ |
学位論文
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抄録 | この論文は抗微生物活性を有する第四アンモニウム塩(QAC)の合成とその活性特性に関す
る研究報告である。この研究目的は、高い抗微生物活性と広い活性スペクトルを有する優れた 薬剤の化学構造をデザインし、さらにQACの殺菌機構解明の糸口を得ることである。本研究で は多種多様な化学構造を有するQACの中で、塩化ベンザルコニウムに代表される脂肪族QACと は異なり、合成が比較的容易で、殺菌機構解明が進みやすいと考えられるピリジニウム型の QACに着目した。 第1章では、N-置換アルキル基の炭素数を12に固定し、ピリジン核に様々な置換基を導入し たQACを合成し、定量的構造活性相関の手法により優れた活性を有する薬剤を探索した。ピリ ジニウム型QACの殺菌活性は、置換基の種類と導入ポジションに大きく影響を受け、特にアミ ノ基やメチル基のような電子供与性基が2位、4位に導入されることによって高められることが 明らかとなった。また殺菌特性は、各誘導体のピリジンの酸解離定数と、4級窒素に隣接する メチレンプロトンのケミカルシフト値と高い相関関係があった。これらの結果より、ピリジニ ウム型QACの殺菌活性が4級窒素の電子密度に依存することがわかった。 一方、Escherichia coli K12の細胞懸濁液は上記薬剤と接触すると短時間で濁りを生じた。こ の現象は薬剤が引き起こした細菌細胞膜の破壊が原因であると考えられた。そこでこの現象を 引き起こす薬剤の作用を細胞破壊活性と定義し、殺菌活性に対してプロットすると高い相関関 係が得られた。これより、この細胞破壊現象がQACの殺菌機構の重要な1段階であり、殺菌作 用に大きく影響していることが示唆された。 2~4章では、1章で得られた知見をもとに、ピリジン核の2位または4位にベンジルアミノ基、 アリルチオ基、あるいはアルキルチオ基を導入し、N-置換アルキル基の炭素数を変化させてそ れらの抗微生物活性を測定した。各薬剤は置換基としてアルキル基しか持たない基本骨格のN- アルキルピリジニウム塩よりも高い殺菌活性と細胞破壊活性を示し、各QACの活性はアルキル 鎖長、すなわち薬剤分子の疎水性に依存した。また、ベンジルアミノ基のような比較的大きな 置換基の導入によって、広いpH領域で、高い殺菌活性が維持された。さらに、アルキルチオ基の 導入で1分子中に2個のアルキル基を持ったQACは、殺菌温度の影響をほとんど受けなかった。 5章は、2個のアンモニウム窒素と2個のN-アルキル基を有するbis-QACの合成およびその抗 微生物活性の結果である。先の章で得られた知見から、かさだかい置換基を持つQACが優れた 殺菌特性を持ったことより、分子の大きなbis-QACが高い抗微生物活性を有することが予期さ れた。2つのアルキルピリジニウム塩を4位でイオウを介して3~10個のメチレン鎖で連結した 化学構造を持つ新規bis-QACは、グラム陰性細菌、陽性細菌の両方に対して非常に高い殺菌活 性を示した。また、一般にQACはカビに対して有効ではないが、新規bis-QACは代表的な抗カ ビ剤のTBZよりも高い活性を示した。さらにbis-QACはpH、温度の影響を受けず高い殺菌活性 を維持した。 |
発行日 | 1999-11
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備考 | 画像データは国立国会図書館から提供(2012/3。JPEG2000形式を本学でpdfに変換して公開)
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フルテキストファイル | |
言語 |
eng
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文科省報告番号 | 乙第1707号
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学位記番号 | 乙工第52号
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学位授与年月日 | 1999-11-12
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学位名 |
博士(工学)
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