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ID 95707
タイトルヨミ
ホニュウ ドウブツ ヘキソキナーゼ ノ イデンシ コウゾウ ト キノウ
著者
資料タイプ
学位論文
抄録
ヘキソキナーゼは、グルコースを含むヘキソースの6位リン酸化を触
媒する解糖系の律速酵素である.哺乳動物に存在する4種類のアイソザイムの
うち、I~Ⅱ型はおよそ100kDaの非常に相同性の高い一本鎖ポリペプチドによ
り構成されている.これら3種のアイソザイムは、それぞれ相同性の高い2本の
50kDaポリペプチドが重複・連結した形で構成されている. 一方、Ⅳ型(グルコ
キナーゼ)は約50kDaの一本鎖ポリペプチドであり、100kDaヘキソキナーゼにみ
られる重複構造のN-末端側半分およびC-末端側半分各々と相同性がきわめて高
いことから、I~Ⅲ型の100kDaヘキソキナーゼは、50kDaの先祖へキソキナーゼ
が、一方で変異を経てグルコキナーゼなどの50kDaヘキソキナーゼ遺伝子に、も
う一方では、先祖遺伝子が重複と融合を経て100kDaヘキソキナーゼに、進化し
たのではないかと従来考えられていた. しかしながら、100kDaへキソキナーゼ
の遺伝子構造はこれまで解析されておらず、したがって、先祖ヘキソキナーゼ
の遺伝子重複による進化説は、推測の域を出ていなかった.
そこで申請者は、すでに報告されている100kDaラットⅡ型ヘキソキナーゼを
コードするcDNAの塩基配列をもとに作製したプローブを用いて、ラット肝臓ゲ
ノムライブラリーのスクリーニングをおこない、ラットH型ヘキソキナーゼ遺
伝子の一部分を得ることに成功した.その解析により明らかになった100kDaⅡ
型ヘキソキナーゼ遺伝子の部分構造と、50kDaグルコキナーゼ遺伝子の構造とを
比較した結果、両遺伝子の対応するエクソンの長さ、およびイントロン挿入部
位が完全に一致することを見い出した. さらにヒトのⅡ型ヘキソキナーゼ遺伝
子についても単離・解析を行いヒトグルコキナーゼ遺伝子の構造と比較したと
ころ、ラットの場合と同様の結果が得られた.これらのことより、100kDaヘキ
ソキナーゼ遺伝子は、2つの50kDaグルコキナーゼ遺伝子からその構造を保存し
た形で重複と融合を経て進化したことが強く示唆された.
このような進化を経て形成された哺乳動物ヘキソキナーゼの4極のアイソザイ
ムは、1次構造上の相同性が非常に高いにもかかわらず、その機能的性質は大き
く異なることが知られている.すなわち、グルコキナーゼのグルコースに対す
るKm値は、Ⅰ~Ⅲ型ヘキソキナーゼの100倍以上もの高い値を示し、特に反応生
成物であるグルコース6リン酸(Glc-6-P)によって、100kDaヘキソキナーゼは反
応が阻害されるが、グルコキナーゼは阻害されない.そこで、相同性の高いヘ
キソキナーゼアイソザイム間における、このような機能的性質の違いを決定す
る構造的特徴の解明を目的として以下の研究を行った. これまでの報告から、
100kDaヘキソキナーゼの機能的性質は、その重複構造のC-末端側半分が担って
いることが明かにされている. したがって、本研究では100kDaラットⅡ型ヘキ
ソキナーゼの50kDaC末端側半分(HKC)に着目し、遺伝子工学的方法によって変異
HKCタンパク質を作製し、その機能的性質をHKCと比較することにより、研究目
的の達成を試みた.具体的には、HKCのアミノ酸配列を変えることなく数種の制
限酵素認識部位を導入したcDNAを作製し、そのHKCのcDNA中のATPおよびグルコ
ースとの結合推定部位を含む領域と、グルコキナーゼcDNA中の相当する領域と
をカセット的に置き換えることにより、50kDaキメラヘキソキナーゼcDNAを構築
した.この組換えHKCのcDNAを取り込ませた大腸菌において、人為的にキメラ
HKCタンパク質を発現させ、その機能解析を行なった結果、グルコースとの結合
には広い範囲の立体構造が、逆にATPとの結合には極めて限定された領域の構造
が重要であることが明らかになった.また、G1c-6-Pによる阻害反応は、HKC中
のATP結合推定部位を含む領域をグルコキナーゼ中の相当する領域と置き換える
ことによって著しく低下した.
発行日
1994
備考
画像データは国立国会図書館から提供(2011/9/26。JPEG2000形式を本学でpdfに変換して公開)
フルテキストファイル
言語
jpn
文科省報告番号
甲第711号
学位記番号
甲薬第21号
学位授与年月日
1994-03-26
学位名
博士(薬学)
部局
薬学系