直近一年間の累計
アクセス数 : ?
ダウンロード数 : ?
ID 96895
タイトルヨミ
TGF-β1 ニヨル ヒト ダエキセン サイボウ ノ ゾウショク ヨクセイ ニオケル テンシャ インシ NF-κB ノ カンヨ ト ソノ ハツゲン チョウセツ キコウ
著者
茂木, 勝美 徳島大学大学院歯学部口腔外科学第二講座
資料タイプ
学位論文
抄録
Transforming growth factor (TGF)-βは、上皮細胞、血管内皮細胞および血液・神
経細胞などにおいて細胞増殖抑制作用を発揮することが知られており、またTGF-β1に
よる細胞増殖抑制機構からの離脱は細胞の癌化の際、高頻度に見られる現象として理解
されている。既に我々は、種々の悪性度を有する培養ヒト唾液腺細胞クローンを用いて、
TGF-β1がこれら細胞クローンの増殖能に及ぼす影響を解析した。その結果、細胞の悪
性転換に伴いTGF-β1による細胞増殖抑制機構からの離脱が認められ、この離脱機構に
TGF-βⅡ型レセプター(TβR-Ⅱ)の欠損が関与していることを明らかにした。一方
NF-κBは、生体の免疫・炎症反応において重要な役割を有する転写因子であるのみな
らず、近年細胞の増殖制御に関与する遺伝子の発現調節にも関与していることが明らか
にされてきた。しかしながら、TGF-β1による転写因子NF-κBを介した細胞増殖抑制
に関してのメカニズムについては、現在のところほとんど解明されていない。そこで本
研究においてはTβR-Ⅱの発現様式の異なる3種類のヒト唾液腺細胞クローン、すなわ
ちTβR-Ⅱを発現するSV40不死化ヒト唾液腺細胞クローン(NS-SV-AC)とTβR-Ⅱの発
現低下を示すヒト唾液腺癌細胞クローン(HSGc) 及びTβR-Ⅱの発現が欠損した転移性
ヒト唾液腺癌細胞クローン(cl-1)を用いて、TGF-β1によるこれら細胞クローンの増殖
能とNF-κB活性に及ぼす影響及びNF-κBの抑制因子であるIκB-α の発現様式並びに
細胞増殖におけるNF-κB活性抑制の意義について検索した。その結果、TGF-β
1(5ng/ml)処理によりNS-SV-ACとHSGcにおいては細胞増殖抑制効果が認められたが、
cl-1においては増殖抑制効果は認められなかった。また、各細胞クローンをTGF-β1に
て処理することによりNS-SV-ACとHSGcにおいてはElectrophoretic mobility shift
assayでの検索よりNF-κB活性の抑制がみられたが、cl-1ではNF-κB活性の抑制は認
められなかった。なお、ヒト唾液腺細胞においては.TGF-β1未処理の時点でも高いNF
-κB活性を有しており、このNF-κB活性は細胞の悪性度に比例して高いことが明らか
になった。NF-κBの構成分子の一つであるp65蛋白の核内での発現はTGF-β1処理に
より各細胞クローンにおいてNF-κB活性の変動と同様の変化を示すことがWestern
blotでの検索より明らかとなった。NS-SV-ACとHSGcにおけるTGF-β1によるNF-κ
B活性の抑制機構をNF-κBの抑制因子であるIκB-α の発現様式より解析したところ、
Western blot及びRT-PCRでの解析よりTGF-β1はIκB-α 遺伝子の発現を転写レベル
で上昇させる結果、IκB-α 蛋白の発現促進を引き起こしていることが明らかとなった。
次にNF-κBの構成分子の一つであるp65蛋白に対して特異的なアンチセンスオリゴヌ
クレオチドにてNF-κBの活性を阻害した場合、cl-1を含む全ての細胞クローンにおい
て細胞増殖能が抑制された。また、外界からの刺激によりリン酸化を受けず恒常的に
NF-κBを抑制する変異型IκB一α cDNAをNS-SV-ACに導入することにより、
NS-SV-ACの細胞増殖能は抑制された。以上の結果より、TGF-β1はヒト唾液腺細胞
においてIκB-α 遺伝子の転写促進を介してNF-κB活性を抑制することが明らかとなっ
た。また、ヒト唾液腺細胞においては転写因子NF-κBの発現を低下させることにより、
細胞増殖抑制を惹起しうることが確認された。従って以上の所見よりTGF-β1はNF-κ
B活性を低下させることによりヒト唾液腺細胞の増殖を抑制する可能性が示唆された。
備考
画像データは国立国会図書館から提供(2012/3。JPEG2000形式を本学でpdfに変換して公開)
フルテキストファイル
言語
jpn
文科省報告番号
甲第1004号
学位記番号
甲歯第141号
学位授与年月日
1999-03-26
学位名
博士(歯学)