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ID 96229
タイトルヨミ
センタクテキ ノルエピネフリン ゾウキョウ サヨウ オ ユウスル テトラヒドロイソキノリン ユウドウタイ ノ ゴウセイ ト コウゾウ カッセイ ソウカン
著者
樫本, 稔留
資料タイプ
学位論文
抄録
うつ病はごくありふれた病気で、その発生率は全世界で3%
といわれ、さらに増加しつつある。近年、このうつ病治療薬と
して、より選択的なモノアミン取込み阻害作用をもつ薬物の出
現が望まれ、開発されている。
最近、フェナシルアミン誘導体(2a)の零価ニッケル錯体を用
いる1ステップの反応により、2-メチル-4-フェニル-1,2,3,4-
テトラヒドロイソキノリン-4-オール(PI-OH) (1a)が合成され
た。この(1a) には、選択的なノルエピネフリン(NE)取り込み
阻害による増強作用が認められ、理想的な抗うつ薬となる可能
性が考えられている。
著者は、この興味ある化合物(1a)に着目し、その構造活性相
関を明らかにするとともに、より活性の強い薬物の創製を目指
して本研究を行った。
まず、PI-OH誘導体を効率良く合成するために、零価ニッケ
ル錯体を用いる方法の欠点であった収率面での改良に着手した。
その結果、n-ブチルリチウムを用いたN-(2-ヨードベンジル)フ
ェナシルアミン誘導体の分子内Barbier反応による好収率で新
規な合成法を見出し、種々のPI-OH誘導体を合成することがで
きた。また、この反応及び零価ニッケル錯体を用いる方法の適
用範囲に関する知見を明らかにした。
次に、PI-OHのNE増強作用に対するエナンチオ選択性を明
らかにするため、(1a) の光学分割を検討し、順相キラルカラム
(Daicel Chiralcel OJ) を用いたHPLCにより達成することが
できた。光学活性体の絶対構造は、CDスペクトルの励起子キ
ラリティー法により、R-(+)-(1a)及びS-(-)-(1a)と推定し、
(+)-(1a)methiodideのX線解析により確認した。この方法を
応用して、(1b) を含む数種の誘導体の光学分割及び光学活性体
の絶対構造の決定を行うことができた。
以上のように合成した種々のPI-OH誘導体のNE増強作用を
検討することにより、以下の構造活性相関を明らかにすること
ができた。
1. 2位の窒素原子上の置換基は、メチル基が最適である。
2. 3位の置換基は活性を低下させる。
3. 4位の水酸基が重要な働きをしている。
4. 4位のフェニル基も重要である。このフェニル基上の置
換基としては、4位に不対電子を有するものが良く、
中でも4-クロロ基が最適である。
以上の結果から、最も強い活性を有する4-クロロフェニル誘
導体(1b) を見出すことができた。
また、PI-OH(1a)及び4-クロロフェニル誘導体(1b)の光学
活性体の作用には、非常に高いエナンチオ選択性が認められた。
すなわち(1a)及び(1b) ともR-(+)-体はNE増強作用を示した
が、s-(-)-体には増強作用も抑制作用もみられなかった。
本研究で見出されたR-(+)-(1a)及びR-(+)-(1b)は、NE取り
込み機構を研究するための重要な化合物となることが期待され
る。また、最も活性の強かった(1b)には抗うつ薬の一次スクリ
ーニングであるラット強制水泳テストにおいてデシプラミンの
10倍の活性が認められたことより理想的な抗うつ薬の候補とな
ることが期待される。
発行日
1998
備考
画像データは国立国会図書館から提供(2011/9/26。JPEG2000形式を本学でpdfに変換して公開)
フルテキストファイル
言語
jpn
文科省報告番号
乙第1601号
学位記番号
乙薬第29号
学位授与年月日
1998-03-11
学位名
博士(薬学)