ID | 97122 |
著者 |
大日, 輝記
Department of Parasitology and Immunology, The University of Tokushima School of Medicine
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資料タイプ |
学位論文
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抄録 | 寄生虫感染時の免疫応答には大きく分けて2つの型がある。蠕虫感染ではTh2型の免疫応答が優位となり、血清総IgE量の上昇、好酸球血症、肥満細胞増多などが特徴的に観察される。いっぽう、原虫感染においては、Th1型の免疫応答が主導となり細胞性殺寄生虫反応などによって寄生虫の排除にはたらく。申請者らは、リーシュマニア症の感染モデルにおいて、感染感受性マウスに対しリソソーム内カテプシンB選択的阻害剤であるCA074を投与することで免疫応答がTh2型からTh1型へと変化し感染抵抗性になることを発見した。申請者らはさらに、卵白アルブミン免疫マウスにおいても同様にCA074の投与で抗体産生などの免疫応答がTh2型からTh1型へと変化することを確認し、この現象がより普遍性を持つものであることを証明した。これらのことから、ある種の寄生虫感染に特徴的な免疫応答が抗原プロセッシングに関わる宿主リソソーム内酵素の種類によって選択的に誘導される可能性が考えられた。
いっぽう申請者らは、リーシュマニア感染マウスに対しリソソーム内カテプシンD阻害剤であるペプスタチンA を投与した場合にTh1型・Th2型双方の免疫応答が低下することを発見した。この現象も卵白アルブミン免疫マウスにおいて同様に観察された。これがTリンパ球に対する直接的・非特異的機能抑制ではないことを確認し、さらに詳細な解析により、宿主細胞内で抗原提示分子の輸送・調節にはたらくインバリアント鎖の分解抑制によるものであることを解明した。 更に申請者らは、マウス・ラットの腸管内寄生性線虫であるNippostrongylusbrasiliensisが、カテプシンB等を阻害するシステインプロテアーゼインヒビターを分泌することを発見し、この分子を新規にクローニングしニッポシスタチンと名付けた。ニッポシスタチンは試験管内でリソソームによる卵白アルブミンのプロセッシングを阻害した。ニッポシスタチンは卵白アルブミン免疫マウスへの生体内投与で脾細胞の抗原特異的増殖反応及びサイトカイン分泌を抑制し、抗原特異的IgE産生も低下させた。申請者らはN.brasiliensisが宿主内でこの分子を分泌することで 抗原プロセッシングを変化させ、宿主免疫を調節している可能性を示唆した。 以上申請者らは、寄生虫感染における宿主の免疫応答がリソソーム酵素の種類と機能によって異なるだけでなく、宿主リソソーム酵素が寄生虫による免疫回避・修飾機構の標的となりうることを明らかにした。 |
備考 | 画像データは国立国会図書館から提供(2012/3。JPEG2000形式を本学でpdfに変換して公開)
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フルテキストファイル | |
言語 |
eng
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文科省報告番号 | 甲第1171号
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学位記番号 | 甲医第654号
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学位授与年月日 | 2001-02-22
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学位名 |
博士(医学)
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